第2章 駅ビルにて

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【第1節】深鈴より うん!じゃあ決定ね! そう打ち込むと、スケジュール帳を開く。 お気に入りのシールを貼って、お花見と書き込んだ。 ピクニックは好きだ。何か足りないものがないか不安になって、カバンはパンパンになるけれど、その作業さえ楽しい。 ひとりじゃきっとたいしたおかずを作れない歩雪くんを誘って、当日は一緒に何品か作ることに決めた。 自分も入れて全部で7人。ちょっとした肝っ玉母さんになった気分だ。 ……違う。 ……本当は、本当は私のことを彼女として意識してくれない彼にちょっとでもこっちを向いてもらおうと策を練った結果だ。かわいいエプロンを着ればどうにか気を引けるんじゃないかと、今は駅ビルの中を物色しているところだ。 ……歩雪くんはどんな格好なら振り向いてくれるのだろう。……私はどこで選択を間違ったのだろう。私がなりたかったのはどんなに離れても互いの頑張りに勇気付けられるようなそんな戦友のようなものじゃなく、会えないなら会いたいと思うような、例え離れていてもどうしようもなく会いたくなって駆け出してしまうようなそんな関係になりたかった。今の私は本当に彼の戦友であり親友のようだ。
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