322人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
魔導師の……弟子?
「トキネ!」
呼ぶ声に、私はドキッと肩を跳ねさせました。
どうしよう。あの声は確実に怒っている声です。さっきのあれだ、私絶対間違えた。
「は、はい……」
ドキドキしながらお師匠様の部屋へと向かってみます。
長い廊下を渡って行くと、お師匠様はご自分の部屋の前で、片手を腰に当て、立って私を待っていました。
――もう片方の手に、とある草を持っていらっしゃる。
「……来たか」
お師匠様は私の顔を見ると、その無表情をぴくりとも動かさず唇だけを動かしました。手にしていた草を軽く持ち上げながら。
「これは、頼んだ薬草じゃない。いつになったら覚えるんだ。同じ物を依頼し続けてもう一週間経つ」
「……すみません……」
だってだって、薬草って見分けがつかないのが多いんです。葉っぱの見た目はほぼ同じなのに、先端がちょこっとだけカールしてるもの、それだけで違う種類って言われるのです。
そういう微妙な違いばかりの薬草を、今のところ五十種類、全部覚えろとのお達し。
たった一週間で、覚えられるわけが!
「……何か言いたそうな顔だな」
最初のコメントを投稿しよう!