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キョウチクトウの系譜
左腕の時計は、午後5:00を示していた。
ほっと一息ついて、マグカップを口に運んだ。
既に冷めきったコーヒーの苦味に思わず顔をしかめたが、それを微笑みに変えるほどの充実感に私は内心満足していた。
明日は我々の商品企画をクライアントにアピールする大事なプレゼンテーションの日であり、その為、今日はその資料作成などの準備に、一日の時間をすべて費やさなければならなかった。
終わらなければ、徹夜をしてでも完成させる事、必至の案件だったが、存外スムースに進んだことで心にゆとりが出来ていた。
資料の素案は事前にクライアントのマネージャーとのメールのやり取りで内々に好評を得ている。あとは本番でさえ失敗しなければ、ほぼまとまる勝ちゲームという事も、心を満たす大きな要因だった。
それにこの商談が上手く行けば、間違いなくボーナスの査定も上がるし、昇進の評価の対象にもなるはずだ。
こういう日は、正直言わせてもらうと家に帰りたくはなかった。この気分を妻の愚痴で台無しにされたくないからだ。
そこで私は携帯電話のスケジュールアプリを開いた。やはり思った通り今夜は仕事もプライベートも予定は無かった。
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