カナリア

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 ある日若いメスのカナリアが青年に買われて行きました。  メスのカナリアは新しいかごの中で誇らしげにさえずりました。 「わたしはこれから歌うの、この人のために。まいにち歌おう。雨の日はわたしの歌で彼の心をお日さまで照らし、悲しいときはわたしが代わりに泣こう。」  今までで一番誇らしげな歌声はペットショップの一番隅の薄暗いかごの中にまで届きました。 「本当にどれでもいいの?」  白いお花の髪止めをした女の子は興奮した声で言いました。 「いいよ。お誕生日のお祝いに、好きな小鳥をお選び」  女の子のお父さんはやさしく言いました。  女の子はスキップしながら並んだ鳥たちのかごをぐるりと一周すると、今度はじっくりとひとつずつ見てまわりました。 「わたし黄色いカナリアがいいな」     すると店長さんが言いました。
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