天使と天才

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「ほんじつよりー、実技訓練に入るー」 警官としての、職業訓練。今日からは路上柔道と捕縛術の訓練に入る。 ヘッドギアと衝撃吸収ベストを着ると、緊張でどきどきと心が跳ねる。 い、痛くないといいんだけど……。 「じゃあ、まず、ナイフを持った暴漢が襲い掛かっていた時は――」 教官が、例として俺に、プラスチックナイフを構えて刺そうとしてくる。 反射的に。ほぼ、本能で。 俺は教官のナイフを持った腕を掴んで、投げ飛ばしていた。 「あたたた……ジャック・ザ・リッパー!!まだ説明の途中だ!!」 はっと俺は教官から奪ったナイフを取り落とし、平謝りした。 「しかし、今の動きはいいぞ!!さすがシリアルキラーだ!!」 「はは……どうも」 あまり嬉しくない、褒められ方をした。 予想に反して、格闘訓練では、俺はかなり優秀な成績を残せた。 ジャックの記憶が、犯罪者がどう動くか、こちらを傷つけよう、脅そうとする相手がどう動くか、教えてくれる。 「よくやったな、日燈」 教官に褒められて、俺は少し嬉しくなった。 一方。 基本的に頭脳労働者なアインシュタインの生まれ変わりの貫と、人を癒す知識しか受け継いでいない斗桐は、教官にコテンパンにしごかれて、ぶっすうとむくれていた。 「あいつ守に気があるんだ。エコひいきしてるよ」 ぶつぶつ斗桐が愚痴る。 「おいおい、めったなことを言うものではないよ、天使どの。でももしかすると彼は可愛い系が好きなショタコンかもしれない。気をつけるとしよう」 貫が斗桐にあわせて軽口を叩いた。 「えっじゃあ僕気をつけないと」 「何を言う。可愛い系は守くんだ」 「二人とも、帰ろう。ゲーセン行こうよ」 座り込む二人に声をかけると、驚いた顔で貫が俺を見た。 「しかし――あんなことがあったばかりだが」 「え、今日は斗桐から離れないから。大丈夫だよ」 ふふん、と得意げに斗桐が貫を見下ろす。 「こういうコなんだよね、守って」 「……守くんは護身術を、本当に、しっかり習ったほうがいいな」 やれやれ、といいながら貫は立ち上がって砂をはたき、ヘッドギアを暑そうに脱いだ。
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