天使と天才

3/5
前へ
/5ページ
次へ
ゲーセンにて。 俺は貫と一緒に、音ゲーをやっていた。斗桐は得意な格闘ゲームで、信者をフルボッコにして遊んでいた。 「……守くん、守くんは、俺とよく遊んでくれるな」 「うん、貫は特別なんだ。俺にこんなに優しくしてくれたのは、貫が初めてだよ」 少し顔を赤くして、貫はそっぽを向く。コンボが途切れた。 「そう言ってくれるのは嬉しいが……俺は、たぶん、普通の男だぞ。取り立てて優しいというわけじゃないと、思う」 「でも……」 「……守くん。これから君はどんどん、転生者や、一般人の優秀な人間と過ごす機会が増えるだろう。そういう人間は、おそらく、俺と同じように君に接する。ごく、普通に、君を人として扱うだろう」 想像がつかない。今までとは別世界に引っ越すような話だ。 「今まで君の傍にいた人間が、君をどう扱ってきたかは……その、この間、あの事件で、だいたい分かった。やつらは凡人以下、クズだ」 天才が吐き捨てる。 「君の体が大きくなって、君が警官として立派に成長すれば、ああいうクズは君の周りからいなくなる。だから……斗桐くんにあんまり、つけこまれないようにした方がいい」 息を呑んだ。どこまで貫に、斗桐との関係がバレているのだろうか。不安になる。 「今は、君に好意を寄せるのは、斗桐くんや、俺ぐらいしかいないから、俺たちが特別優しく感じるのかもしれないが……俺たちは、普通だ。ただ、転生がどのようなものか、正しく知っているだけの、存在なんだ。君は可愛いんだから、普通の人間社会に入れば、すぐ沢山の人に愛されるよ」 「そ、そんな……おだてても失敗してあげないからね」 ずっと、貫の手が止まっている。パーフェクトだったのに、もう少しで音ゲーがゲームオーバーになりそうだ。 「だから、君の寂しさに斗桐くんがつけこむのを、あまり許さないほうがいい」 ……図星過ぎて、目頭が痛くなった。 「とぎりが、つけこむ、なんて」 「つけこんでるだろ。あれは好意の押し付けだ。君が孤独なのを利用して、君の傍にいれるようにしてる。斗桐くんのファンのように目が曇ってなければ、誰でも分かることだ」 でも、俺も――斗桐を、利用してる。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加