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ゲーセンにて。
俺は貫と一緒に、音ゲーをやっていた。斗桐は得意な格闘ゲームで、信者をフルボッコにして遊んでいた。
「……守くん、守くんは、俺とよく遊んでくれるな」
「うん、貫は特別なんだ。俺にこんなに優しくしてくれたのは、貫が初めてだよ」
少し顔を赤くして、貫はそっぽを向く。コンボが途切れた。
「そう言ってくれるのは嬉しいが……俺は、たぶん、普通の男だぞ。取り立てて優しいというわけじゃないと、思う」
「でも……」
「……守くん。これから君はどんどん、転生者や、一般人の優秀な人間と過ごす機会が増えるだろう。そういう人間は、おそらく、俺と同じように君に接する。ごく、普通に、君を人として扱うだろう」
想像がつかない。今までとは別世界に引っ越すような話だ。
「今まで君の傍にいた人間が、君をどう扱ってきたかは……その、この間、あの事件で、だいたい分かった。やつらは凡人以下、クズだ」
天才が吐き捨てる。
「君の体が大きくなって、君が警官として立派に成長すれば、ああいうクズは君の周りからいなくなる。だから……斗桐くんにあんまり、つけこまれないようにした方がいい」
息を呑んだ。どこまで貫に、斗桐との関係がバレているのだろうか。不安になる。
「今は、君に好意を寄せるのは、斗桐くんや、俺ぐらいしかいないから、俺たちが特別優しく感じるのかもしれないが……俺たちは、普通だ。ただ、転生がどのようなものか、正しく知っているだけの、存在なんだ。君は可愛いんだから、普通の人間社会に入れば、すぐ沢山の人に愛されるよ」
「そ、そんな……おだてても失敗してあげないからね」
ずっと、貫の手が止まっている。パーフェクトだったのに、もう少しで音ゲーがゲームオーバーになりそうだ。
「だから、君の寂しさに斗桐くんがつけこむのを、あまり許さないほうがいい」
……図星過ぎて、目頭が痛くなった。
「とぎりが、つけこむ、なんて」
「つけこんでるだろ。あれは好意の押し付けだ。君が孤独なのを利用して、君の傍にいれるようにしてる。斗桐くんのファンのように目が曇ってなければ、誰でも分かることだ」
でも、俺も――斗桐を、利用してる。
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