第8章 真実の記憶

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土の湿った匂いがする。 目を開けると誰かのつま先が私の鼻っ面にくっついている。 ゆっくりと見上げていくと、そこに見知らぬ男達の面々が並んでいた。 両手が背後の腰のあたりで縛られているようだ。 肩が異常に痛んでいる。 少ししか動いていないのに、私はうめき声を漏らした。 すると。 髪の毛を掴まれて持ち上げられた。引っ張られて痛いってもんじゃない。 「よぉ、起きたか」 と、にきび面の浅黒い顔が喋った。 私は睨みを効かせながら、周囲の連中の顔を次々に確認する。その中に、見たことがある奴がいるのに気付いた。 「全部聞いたよ。まどか。お前、俺から離れられるって本気で言ってるのか? あぁ? ・・・なんでだよ」 にきび面の顔面が視界を占領する。 煙草臭い息に吐き気を覚えた。と、次の瞬間。 男の顔に唾が吐きかけられた。 私が見ている視点は、私ではないと気付いた。 ばしっ にきび面に頬を叩かれて、首が軋む音がした。 私の視点にいるその人は、ゆっくりとした動作で再び男を見た。 「なんだ?その目は!!」 男は激昂してもう一度叩いてきた。
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