第8章 真実の記憶

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築百年といった古い古民家の表門には似つかわしくない。 現代の呼び鈴が設置されていた。 呼び鈴がまだ鳴り終らないうちに、その家の主が門を開けて私達を見ていたのには、かなり驚いた。六十歳ほどだろうか。 白髪と黒髪がうまいこと交ざって、きれいな銀髪風の長髪を後ろに束ねてある。それに顔の左型には縦の傷跡がはっきりと見て取れる。さらには初冬の朝というのに、半そでシャツにジーンズという服装で盛り上がった筋肉からは湯気が立ち上っている。門の向こうで筋トレでもしていたようだ。 「おはよう。陵平」 おじさんは目を細めながら陵平を見ると、挨拶してきた。 意標を突かれた私達は我に返って挨拶をし返すと、立ち話もなんだからとすぐに門の中に入れてくれた。 「どうした?」 私達は薪割りというものを見たことがない。 あのせりたった筋肉はこの撒き割りの影響なのだろうか。 大きな切り株の脇に積み上げられた無骨な角材や丸太が目に飛び込んでくる。 そして割られたばかりの薪が散在している。 おじさんはそれらを拾い上げて歩き出した。 私達も吊られて、薪を手に持つと後を追う。
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