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「あの」
陵平は何から話せば良いのかわからないのか、舌をもつれさせた。
私はここは出番ではない気がして、様子を見る。
「おかしなことを言いますが・・・。自分は最近までどんな様子だったか教えてもらえませんか?」
すると、おじさんは案外落ち着いた表情のまま陵平を見下ろしてじっと見つめた。
陵平はすがるような目で視線を返している。
10秒以上も沈黙が流れて、やっと言葉を発したのはおじさんの方だった。
「お前さん、今日はしっかりしてるようだな。
いつもは声かけさせてもらっても、聞こえないのか具合が悪いのか、怖い顔をしてさっさと通り過ぎてしまうっていうのに。憑き物でも落ちたようだ」
おじさんはそう言ってほんの少し顔をほころばせた。
「原西さんもやっと安心できるってぇもんだな」
おじさんは小刻みに頷きながら渋い表情で私に視線を移した。
目と目が合ったので、私はやっと会釈をする。
「で?お前さんはこの子の友達ですか?」
「はい。学校でクラスメイトだったんです。今は違うクラスですけど」
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