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ということは、この写真は切り取って使ったものなのだ。
オリジナルがあるのならそれがどうしても見たい気がしてならない。
「陵平。ショックで辛いのはわかる。
でも、こんな混乱した世界を一秒でも早く終わらせたい、とは思わないか?
私が力になるから、ここから本気でがんばろうぜ」
私の言葉が陵平に刺激を与えたようだ。
目の中の光が急速に大きくなっていくのがわかる。
彼は頷いて、遺影をしっかりと見るとこう言った。
「じいちゃん!
俺、じいちゃんが悪人だったなんて信じられないよ。
でも、あの時は・・・あの女が言った言葉を信じて、じいちゃんのこと・・・酷い言葉で罵ってごめん。
自分の目で、耳で、確かめるから」
そう言うと私の目を真っ直ぐに見てきた。
茶色いガラス玉の真ん中に黒くて小さな瞳孔が燦々と燃えている。
私はこの瞳が好きだ、と思った。
「まどか。助けてくれ。
俺は自分のルーツが嘘で塗り固められているなんて耐えられない」
「うん。わかってる。よし、じゃひとつ頼むよ」
私は吸い込まれそうになってクラクラしていたが、今はそんなことよりも陵平の存在を証明してあげることのほうがよっぽど健全な愛情表現だと思った。
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