第8章 真実の記憶

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陵平は押し入れの箪笥を引き出すと、あらゆる書類やノートを持ち出して床に置いた。 「火事でほとんどのものが燃えてなくなった。 でも、こうやって残ってるものもある」 そう言いながら、ひとつずつ探し始めた。 燃えかけて濡れた痕跡が残る本が9冊ある。その一つには数枚の写真が挟まっていた。 「この本は母さんのものだ。  両親が若い頃の写真が何枚かあるのは知ってる。  でも、父さんの私物がほとんどないのはどうしてだろう?  考えてみたら、父さんのものが全くないって不自然だ」 私に写真を一枚ずつ見せながら、陵平は考え込んだ。 私は写真をじっくりと見つめる。若い。20歳ぐらいだろうか。 男女が二人並んで映っている。 どちらも不良っぽい派手なアクセサリーを身につけ、母親は長い金髪と大きなピアスと鋭い目つきの美人だった。 なにより、陵平そっくりだ。私はつい微笑んだ。 「美人だな。お前、お母さんに似たんだな。 そういえば、祖父さんもこんな目をしているよね」 そう言って、次の写真に目を移した時だ。 小さな赤ん坊を抱く女性の顔が酷く歪んでいる。 吃驚したが、それには理由があった。 ぐわぁぁぁんという金属音のような耳鳴りがしたかと思うと、急に真っ暗になった。
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