第8章 真実の記憶

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地面に顔を叩き付けられ、土が口に入っている。 血の味と共に不快な感触が舌に纏わりついている。 気分が悪い。 吐きそうだ。 「やめろ!!」 と、遠くから声が聞こえた。 数人の足音が一斉に動き出し、何かを殴るような音がここまで届いてくる。 やっと顔を上げてそちらを見たが、何人もの男達が束になって誰かを暴行しているようだった。 動こうとするが、体中が痛んで痺れているようでうまく行かない。 ぐいっと髪を掴まれて引っ張り上げられるがままに立ち上がる。 最悪な悪臭が纏わりついた。あのにきび面がすぐ横で大声を張り上げた。 「見ろよ! あいつ、死ぬんじゃないか? あいつが死ねば、お前にはもう俺しかいなくなる。だろ?」 発狂でもしているかのように、男が瞳孔を真っ黒に光らせた目をこちらに向けてきた。 白目が黒く染まっていく。 「良い事いっぱいしてきたよなぁ? お前の全部を俺は知ってる。」 男の唇からよだれがこぼれていた。
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