第8章 真実の記憶

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すぐに目が覚めたが、天井に備え付けらえたカーテンレールを見てすぐに病院だとわかった。 身を起こそうとしても痛みに襲われてまるで鈍器で殴られているようだ。 「だめよ!動かないで」 と、優し気な女性の声がした。 恐る恐るそちらを向くと、頭に白い布を付けた看護師が心配そうに覗き込んでいた。 「ここは病院よ。大丈夫。あなたは助かったわ。 でも、首を痛めているの。しばらくは動かないでね。 おなかの赤ちゃんも無事よ。 この子の為にも元気にならなくちゃね」 50代とおぼしき看護師はねぎらうようにそう言うと、部屋を出て行った。 でも、すぐにバタバタと数人の足音が近づき、勢いよくドアを開けて私のそばにやってきた。 雨と土の匂いがする。 「原西まどか、さんですね。今、話せますか?」 看護師さんが割って入ってきた。 「ちょっと!今、やっと目が覚めたばかりなのよ! 少しは時間を与えてあげようって気はないの? まだ、彼女は話せる状態じゃないわ!! 先生がいないからって調子に乗ってるんじゃないわよ!」 「もう三日も待ってる。短く済ませるから、少しだけ話させてくれ」 渋い男性の声だ。
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