愛して、先生 lack of skill

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自分を押さえつけていた枷が、 その瞬間だけ無くなった。 何かを考えるよりも先に、 足が動く。 「・・・藤原」 小さく呼びかけただけで、うっすらと目を開ける藤原。 その藤原めがけて、 俺は手を振り下ろした。 「――っ、てぇ」 真っ白だった藤原の頬が赤く染まっていく。 俺はその手で、藤原の頭を叩いた。 雪を払うために。 「・・・あ、堀江、先生」 震えた弱々しい声が、紫に近い色の唇から発せられる。 顔も白い。体温が低下している証拠だ。 「お前は・・・どこまでバカなんだ」 枷が無くなったせいか、 思っていたことがすぐ口に出てしまう。 ・・・止まらなかった。 「雪の中長時間待つなんて、自殺行為だと思わないのか」 「・・・でも、来るって信じてたんで」 「それがバカだって言ってるんだ。来ないって言ってた人間を待つなんて」 「だけど・・・・・・来ましたよね」 俺に怒られているにもかかわらず、 藤原は力なく微笑む。 こんな目にあわせた相手に向かって笑うとは。 こいつはどこまで・・・ だが、その笑顔を見ると、不思議と心が落ち着いてきた。 藤原を起こる気力が、なくなっていく。 ため息をついて、藤原へ手を差し出した。 「・・・・・・立てますか」     
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