38人が本棚に入れています
本棚に追加
藤原は頷いて、震える腕を伸ばす。
握った手は、氷のように冷たかった。
その手を引いて、歩き出す。
「っあ・・・」
「・・・まったく」
足に力が入らないのか、
歩けない藤原の隣に並び、腰を抱える。
「す、すみません」
「別にかまいません。私にも少し責任はありますから」
「・・・ところで、どこに?」
「そこの通りでタクシーを捉まえて、私の家に向かうつもりです。
この状態で、藤原先生が無事に帰れるとは思えませんので」
滑らないように気をつけて、一歩ずつ歩く。
藤原はどこか苦しそうだった。
この一件で、体調を崩さなければいいが。
「・・・堀江先生」
「はい」
「ありがとう・・・ございます」
「礼は結構です。私にも責任があると言いましたよね」
「そうです、けど・・・」
吐息混じりの声で、藤原が言う。
最初のコメントを投稿しよう!