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家に着き、藤原をソファに座らせる。
「今、風呂を沸かしますので座っていてください。温かいものを淹れますが、希望はありますか?」
「・・・いえ」
「ではコーヒーを淹れてきます」
キッチンへ行き、湯を沸かす。
その間冷蔵庫を漁り、今ある食材で何を作れるか考えていた。
長時間待っていたということは、
長時間何も口にしていない可能性が高い。
少しでも胃に優しいものを与えるべきだ。
「・・・・・・」
そこまで考え付いて、ふと気づく。
なぜ俺はこんなに、藤原に尽くそうとしているんだ。
俺を脅している相手に。
俺は行かないと宣言していた。
一方的に待っていたのは藤原だ。
凍えようが体調を崩そうが、こいつの自業自得じゃないのか。
冷静になるのが遅かった。
ここまでしてしまってから、自分の愚かさに気がつくとは。
・・・もう少し頭を冷やす必要があるな。
俺はコーヒーを藤原の前に置くと、
再びコートを羽織った。
「え、堀江先生、出かけるんですか?」
「はい、すぐそこのコンビニまで。食べるものを買ってきます」
「そんなの、俺が」
「結構です。これで熱でも出されたら困りますから」
「え・・・」
しまった、と口を塞いだときにはもう遅かった。
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