愛して、先生 lack of skill

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藤原も驚いた顔で俺を見ている。 「ふ、風呂が沸いたら入っていてください。タオルは洗面所のものを使って構いませんから」 藤原が何か言うよりも早く、家を出る。 ドアを閉めて、ようやく顰めていた表情を崩した。 ・・・どうしてあいつは、 俺を縛らなかったんだ。 画像を晒すと脅してくれたら、 Kビルに行った理由も、家に連れてきた理由もこじつけられるのに。 ―感情で動いてしまったなんて、言わなくてすむのに。 買い物を済ませ家に戻ると、藤原は入浴中のようだった。 きっとこれで身体も温まるだろう。 買ってきたものを食べさせて、腹を満たさせ、 とっとと寝てもらおう。 そうすれば、変な質問もされずにすむ。 浴室の方を見て、 俺は、あることに気がつく。 藤原は今、入浴中だ。 もちろん、なにも身に着けていない。 携帯電話も。 ・・・画像を、消せるかもしれない。 音を立てずに、洗面台のドアを開ける。 脱いだ藤原の衣服の上に、 目的のものは置かれていた。 他人の携帯電話を勝手に触るのは、抵抗がある。 しかし・・・このままこいつの好きなように扱われるのは、嫌だ。 チャンスは、今しかない。 手を、携帯電話に伸ばす。 掴もうとして、手が止まった。 画像を消せば、俺は自由になれる。     
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