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磐木先生と一緒に、駅を目指す。
信号待ちの間、ふと目線をあげると、
大きなビルがそびえ立っているのが見えた。
「・・・Kビル?」
「ん?ああ、そうですよ。映画館とかレストランとか何でも入ってるから便利なんですよね、あのビル」
ポケットをまさぐる。
携帯電話に触れると、着信は来ていなかった。
「・・・・・・」
今の時刻は、11時30分だ。
この寒空の下、2時間半も待つバカはいない。
いや、時間より前に着いていたかもしれない。
それならなおさら、待ってはいないだろう。
「堀江先生?信号、青ですよー」
そうだ、待つはずなんてない。
俺が行くわけないことを、藤原は知っている。
だが・・・
・・・でも、
「・・・・・・磐木先生」
「はい?うわっ」
磐木先生の手に、傘の柄を握らせる。
「ほ、堀江先生!?」
「申し訳ありません。用事を思い出しましたので、ここで失礼します」
「え、ちょ、か、傘は?」
「明日受け取ります」
俺は早歩きでその場を去る。
そして、Kビルの前へと向かった。
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