愛して、先生 lack of skill

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この寒空の下、待つバカはいない。 しかしあいつは・・・藤原はバカなんだ。 待っているわけがない。 しかし・・・ 『堀江先生は、絶対に来るって』 確率は、ゼロじゃない。 ゼロじゃない以上、実際に確かめて ゼロにしなくてはならない。 Kビルの前に到着する。 さすがに人気はない。 ビルの明かりも消えている。 辺りを見回すが、人の姿は見えなかった。 どこを見ても、うっすらと雪が積もっているだけだ。 やはり、な。 藤原は、待っていなかった。 いや、もし2時間前ならば待っていたのかもしれない。 こんな時間に来るなんて思わないだろうから、 あいつがいないのは当然だ。 ・・・これで藤原もわかっただろう。 人間なんて、待ってはいけないということが。 待ったところで、来るはずがないということが。 俺も帰らなければ、終電に乗れなくなってしまう。 そう思ってビルに背を向けたとき、 視界の端で、黒いものが動いた。 無意識にその方向へ目を向ける。 「・・・・・・!」 と同時に、足がその物体めがけて歩き出していた。 そんなはずはない。 そんなこと、あるはずがない。 頭ではそう思っているのに、 足と心臓の動きが早くなっていく。 ようやく見えるくらいまで近づいて、 言葉を失う。 そこにいたのは、     
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