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「堀江先生、はいこれ」
「ありがとうございます」
とある授業後、数人の生徒が片づけを手伝ってくれた。
各々の机に置いたままにして、教室へ戻ってもいいと言ったのに、
手伝うと言ってきかなかったからだ。
「よいしょ」
「横田さん、それは重いので私が片付けます」
「先生、これ準備室ですか?」
「今鍵を開けます」
準備室の鍵を開け、薬品の入った棚の鍵も開ける。
生徒からひとつづつ受け取り、棚に収めていった。
すると、実験室から騒がしい声が聞こえてくる。
「いいよーあたしが持つから」
「俺が持つって。お前これ危ない薬品なんだぞ」
「ええっ、マジで?」
「マジマジ。お前はそっちのビーカー持てよ」
その話を聞いていた小菅が、突然笑い出す。
「どうかしました?」
「あの二人、早くくっついちゃえばいいのになーって思って。端から見たらラブラブですよね」
仲の良さそうな二人を見て微笑む友人。
青春の1ページというやつなのだろう。
その1ページの舞台に化学実験室が使われている。
まるで優しくて明るい空気に包まれているようだった。
「・・・小菅さん、お二人に早く持ってくるように言ってください」
「はーい」
小菅が長い髪を揺らして準備室を出て行く。
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