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まったくできなくなったのだ。
「私を守るよう生徒に命じたのはあなたですよね。自業自得です」
『それはそうなんだけど・・・まさか帰宅時間までいるとは思わないじゃないですか!』
「あなたの生徒に対する指導が徹底しているからなんでしょうね。自信をお持ちください」
『いや、そういうことじゃなくて』
藤原は完全に参っているようだ。
それもそのはずだ。
だって1週間も触れ合えていないのだから。
『堀江先生に触れたいです。抱きたい。キスしたい』
「どこにいらっしゃるのかわかりませんが、そういう発言はお控えください」
冷たくあしらうと、電話の向こうから悲しそうな嘆きが聞こえた。
おもわず笑ってしまいそうになるのを堪える。
「・・・感づかれそうなので、そろそろ切ってもよろしいですか?」
『う・・・、はい』
「それと、あなたには関係の無いことですが、明日は休日なので、出かけようと思っています」
『・・・はぁ』
「桜を見に仙草公園まで行く予定です。正午ごろ、一人で入り口付近にいると思います」
声が聞こえなくなる。
藤原は、気がついていないのだろう。
俺がなぜ、明日の予定を事細かに言ったのか。
まあ、それならば仕方が無い。
一人で花見をするだけだ。
『・・・堀江先生』
「はい」
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