もうひとつのたましい

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 空を見上げると、きみどり色の一番目の太陽がちょうど、すいへいせんのかなたにしずんでいた。 しかし、ひとつの太陽が消えてもまだまだ熱気はさめず、ぼくとゲータはフルラレシラウトやコロラレシラウトのち魚がすずしそうにおよいでいるのを見やると、同じ思いをいだいた。 けれども、その思いをだいべんしてくれたのは、意外なことにとおくヒガンの国にいるはずのかのじょだった。  “ねえ、少年たち、今とってもひまでしょう? 水あびするなら今のうちよ。” そのことばを聞いて、待ってましたとばかりに、ゲータはふくを着たままですぐさまとうめいな大河へととびこんだのだった。 ぼくも早くゲータのあとについていこうとしたちょうどそのとき、ぼくは見てはいけないものを見てしまい、開いた口がふさがらなかったけど、声なき声をようやくふりしぼって、ゲータに小さく、こう言ったのだった…。 「ゲータ、きけん、だ…。早く、上がって、こい…。」 そう言ったぼくの目線のさきには、黒くあやしく光る、ぼくらののっているフネの何倍はあろうかという大きな大きな物体がとおくのほうで水中深くもぐっていた。
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