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とにもかくにも上手くいってるんだから誰も文句の言いようがない。私も無事大学を卒業出来るまで育ててもらって社会人一年生。立派に育ったかは分からないが、親としての役目は果たしたと言えるだろう。
夫婦仲はどうかというと、そりゃもう娘の私がこっ恥ずかしくなるくらい仲がいい。
朝の様子は仕事モードに入りつつあるのでお互いのリズムが噛み合わずあんな感じであるが、帰宅後は大体普通だ。程々会話して、同じ食卓で夕食を食べ、談笑する。父は食べるのが遅いので、大体母が取り分ける。そうして見事に盛りつけられたおかずを父は黙々と食べるのだ。それが普通。
そうそう、この夫婦は結婚して20年以上経つが、今でも一緒の布団で寝ている。漏れ聞こえたところによると、手を繋いで寝ているらしい。は、恥ずかしい!
一度夜中にトイレで起きて、たまたま起きていた母と父のこんな会話を聞いた。
「はい、お夜食! 全く、あなたったら私がいないと何にもできないんだから」
口を尖らせたような母の口調。それに応じる父はいつも通りのんびりだった。
「そうだねぇ。君がいなかったら、僕は困るよ」
「ま! 私は貴方が困らないようにするだけの存在かしら?」
冗談めかして母が答える。父は慌てずのんびり、いつもの口調で答えた。
「ん~……君も僕がいなかったら困るでしょ?」
ド直球な回答。母はしばらくキョトンとしていたが、顔を赤らめながら呟いた。
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