似てない夫婦、まるで「あれ」みたい。

3/4
前へ
/4ページ
次へ
「……もう、バカ」  何とも顔から火が出そうな話だった。そのまま気付かれないように寝室に戻ったが、悶えてなかなか寝付けなかったのを覚えている。  なんだかんだと良いながら、夫婦仲は良いのだ。  ぱたぱたとせわしなく動く母と、のんびり余り動かない父。この組み合わせ、思い浮かぶのは…… 「ほら、あなた。早く準備して!」  せわしない朝。いつもの母の、急かす声。  その声を受けて、父はいつものんびりと返す。 「ん~」  分かっているのだか分かっていないのだか、生返事。 「んも~、あなたは毎朝毎朝! 今日は早くから会議があるんだから、早くしてよね! 社長が遅刻したんじゃ格好がつかないわ!」  いつもの光景だ。私は朝食を食べながら苦笑いでそれを見る。 「それじゃそろそろ出るからね! 戸締まりよろしく!」  おっと、今日という日はこのまま見てたんじゃ駄目なんだった。 「あ、ちょっと待って!」  せっかちな母はもう既に玄関から足を出していたが、それを引っ込めてこちらを見直す。 「何? 急いでるんだけど」 「ちょっとは落ち着いてよ。今日はお母さんとお父さんの結婚記念日じゃない」 「……良く知ってたわね。そうよ。父さんと母さんの24回目の結婚記念日」     
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加