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シーラカンスの恋
「堺くーん。ヘルプ」
どのボタンを押そうがうんともすんとも動かないコピー機の前で、私は後輩を大声で呼んだ。
「どうしたんですか? また紙詰まらせたんですか?」
「またって言わないで」
異音を発して止まったコピー機のディスプレイには紙詰まりの表示。表示通りに紙詰まりを取り除いたのだけど復活しないのだ。これでも五分以上は格闘したんだから。
「見せて下さい」
私が一歩後ろに下がると長身の堺くんは深く腰を曲げ、コピー機の左側の扉をガチャンと開く。
「そこも見たのよ。Aっていうところを開いて一番上のレバーを下げて……」
後輩の背中に訴える。堺くんはディスプレイの説明なんか読まずに、私がやった作業と同じことをテキパキとなぞっていった。
「ああ、まだ紙が詰まってますよ。式田さん、レバーを上げる前に無理矢理引っこ抜いたでしょう?」
顔だけでくるりと向き直り、私の顔を見上げた。
「何で分かるの?!」
やっぱりと嘆息した後輩は、奥のローラーから千切れた紙を引き抜いた。ガチャンと扉を閉めれば、『しばらくお待ち下さい』から『コピーできます』の表示に変わる。
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