第2章 苦手な部屋

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第2章 苦手な部屋

編集に入り私はサークルから離れていた。そんなある日、友人から君が編集希望だったこともあり、凄い速度で成長していると他愛もない話題の一つで聞くことが出来た。私は君のカメラ越しの笑顔が見たくなり、ハードディスクがあるスタジオに向かった。スタジオはいつも空気が重くとにかく嫌いだが、この日ばかりは足取りがとても軽くなった。スタジオは珍しく誰も居なかった。私はほっとしながらハードディスクを取り出して編集が終わって完成した動画をみた。動画の中には想像通りの満面の笑顔の君がいた。それを見てるととても癒された。 『あ、先輩!!やっとスタジオ来てくれた。助けてくださいよー。今尺が足らなくて…。どうしたらいいと思います?』 映像の中の君に見入ってたら、いつの間にか君は後ろにいた。 「え……。嘘の予告でも付けたら?」私は柄にもなく動揺しながら答えた。すると君は何かを思いつき編集しだした。その表情はいつになく真剣で。カメラ越しの君とは別の君の様だった。 この日だけは嫌いなスタジオも輝いて感じた。 しかし、そんな時間は長くは続かずスタジオはすぐに人で溢れかえった。君はまだ編集を楽しそうにしてた。でも輝いてたスタジオはもういつもの重くて嫌いなスタジオになってた。私は誰にも聞こえないくらいの声で「お疲れ様でした」と形だけ挨拶をしスタジオを出てきた。
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