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バタバタバタ、と慌ただしく駆ける音がした。スタブはその場を任せ、ドアを開けて外に出た。
それは王に付く優秀な若い侍従だった。急いで来たのか顔を赤くし、汗をかきながら肩ではあはあと息をしている。
呼吸を必死で整え、ゴクッと唾を飲み込んだ。
「っ、王がこちらに参ります」
「ヒートですか?」
「はい。正気を保たれている間は奥方さまの元へは行かないと堪えておられましたが……」
「わかりました」
つまり、首輪を引きちぎり、服を引き裂いて無理やり貫いて揺さぶったあの状態になっているということだ。
ざわついた、荒れた空気が近づいてくるのがわかる。
「王が来られたら、王だけが部屋に入るようにしてください。他の者たちは隣の扉からそのまま控えの間に入るよう、伝えてください」
「わ、わかりました」
スタブは長い裾をひらりと翻して回れ右すると、室内に入って行った。
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