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「っ!」
はっと目覚めた。
(ってぇ……)
頭がガンガンと痛む。
その痛みに、自分の身に何が起こったか気が付いた。
「っ!」
動こうとして……動けなかった。ジャラ、と金属音がした。
(は?)
両腕は上にあげられ、手首を錠で拘束されている。
身体は寝ている状態。頭上を見上げると、腕はさらに頑丈に固定されている。これではまず起き上がることができない。
さらに、口に異物感。声を上げないためか、自殺させないためか、口に布が押し込まれている。
「っ!」
もがくように身体を動かしていると、ズキッと頭部とは違う痛みが右足に走った。
(――そうだ、そうだった)
思い出し、自分で傷つけた右太ももを見た。
確か自分は婚姻装束を着ていたはずだが、真っ白な服に包まれていた。
真っ白な服が汚れていない。ということは、何らかの処置がなされたということ。脚を動かせば、傷が布か何かで巻かれていることがわかる。
不思議なことに、手の自由は完全に奪っているのに足は自由だ。足枷はなく、固定されてもいない。おかげで敷かれた布はしわが寄り、踝まである裾は膝までずり上がっている。
(……ここはどこだ?)
明るいが、今が朝なのか夜なのか。あれからどれくらい経っているかもわからない。
体感は涼しい。かなり快適だ。
砂漠なら昼は灼熱、朝晩は冷え込む。こんな快適な時はほとんどない。となると、砂漠ではない別のどこかと考えるべきか。
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