王都コンコルド

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ルピスは身体に幾重にも布を巻かれ、頭を顔にもグルグルと巻かれてほとんどを隠した。出ているのは目元くらい。それでも黄金の眼は目立つ。これを見られたら身元特定は容易だ。  ジャージャルマンで黄金の瞳を持つのはララバカイン族だけ。彼らのみの特徴だ。彼らの野蛮さ、「人ではない」という意味も含んで「獣の眼」と呼ばれている。 「っ!?……!?!?」  部屋に運び込まれた時、ルピスに意識はなかった。  部屋を出て、まず見たこともない長い廊下に驚く。そこにずらりと近衛兵が立っていたことに驚く。初めて見るエレベーターを見て驚く。自動で開く金属のドアを見て驚き、密室に閉じ込められて奇妙に思ったのも束の間、それが降下して驚く。砂漠で生きてきたルピスにとって、自分の身体が降下するなんて経験は今までにない。  声には出さぬものの、身体や表情は正直だった。ピクンと眉が跳ね、眉間に皺が寄り、怪訝な目をする。何も知らない未開の様子を伺いつつ、側近たちは彼に付き従った。  高層からどこにも立ち寄らず、直通のエレベーターで地下まで降りる。ドアが開くと、そこには高級車が待ってました!とばかりにドアを開けてつけていた。  もちろん、ルピスは車を見るのも初めてだ。「なんだこれ」と顔が言っている。 「奥方さま、どうぞ」  ドウィンに促され、後部座席に。ディヤは自ら反対側のドアを開けて乗り、ルピスは分厚い身体の兵士二名に挟まれた。それでも窮屈なんてことはない。車内は広々ゆったり、快適だ。  ルピスは心の底から、なんだこれはと思った。
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