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「向こうにいる戦士は誰だ?」
「ムナ、メージ、モリナ、マルカイ、コカ。全部で十人ちょっとだな」
「そうか…」
ララバカイン族には、年頃になると男女問わず襲われる月のものがある。
それは個人差があるものの、発症するとまず正常ではいられない。そのため、一族の天幕から離れたところに安全策として隔離されていた。発情期を迎えた獣と似ているため、一族ではそのまま「発情期」と呼んでいた。
これを悪いと捉えることはない。「子作りができる身体になった」と喜ばれ、初めて迎えた後は親族総出で祝う。天幕には酒と豪華な食事が並び、そのために男たちは狩りに出かける。
「あいつらが戦えればいいが……」
症状が治まりつつあるのなら応戦することも可能だ。少しでも理性があるのなら、一族の窮地に奮い立つことができる。やつらはそういう男だ。
ただ、真っただ中なら難しい。交尾のことしか考えられない盛る凶暴な獣と化している最中、戦士として戦えと言うのは無茶な話。ルピスでも不可能だ。
「だが、俺たちがここで敵を殲滅すればあいつらが戦う必要はない」
「ああ!その通りだ!」
「ここでなんとしても食い止める!仇は討つ!」
ルピスの不安を汲み取ったのか、励ますように頼りになる同胞たちが勇ましい声をあげた。
「……その通りだな」
ルピスはふっと笑い、眼を閉じた。
そして、ギン!と力強く開眼した。殺気と威圧を放ち、空気がビリビリと震える。ここに草木でも生えていたら、一瞬で枯れ果てただろう。双眸は剣のように鋭く研がれ、眉と一緒につりあがっている。
燃え盛る炎のような光を黄金に宿していた。何度見ても戦士たちがゾクッとする、男でも惚れる一族一勇敢な男の戦闘モードだ。
慌ただしかった音は無事出立し、だいぶ静かになった。
夜。冷たい肌を刺す風の音と舞う砂、揺れる炎の音がする。
「――来た」
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