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平たく言えばたちんぼに引っかかって大金を奪われたけれど、すっかりその女の虜になったという内容である。
女性にこんなやりとりを見せるなんてデリカシーがないと思いつつも、この女はそれはそれで厄介そうだなと阿澄は認識した。
その日の晩。社長に連絡してから阿澄は件の本屋に張り込んで魔女の出現を待っていた。男子たちに聞いた話では、今夜の九時過ぎに待ち合わせをしているという。
「待ったかしら?」
「いんや」
「それじゃあ今日はどこでしましょうか……あら、七万しかないの? 学生さんだから大目に見てあげるけれどホテル代を抜いたら寂しいわね。そうだ、キミの家に行きましょうか」
どうやらこれから男子生徒の家に行ってことに及ぶらしい。他人の行為をのぞくのはいかがなものかとか、だからといって無視して乗り込んだらバイトしてまでこの女に会いに来た彼が可哀想だとか考えながら阿澄は二人の後をつける。
阿澄は探偵見習いとして捜査は苦手だが荒事と隠行は得手としている。元からある種の特殊能力者を集めた彼女が所属する事務所において、阿澄は腕っ節の担当なのだ。
社長をシャーロックの頭脳に例えるなら彼女はバリツである。そんな阿澄の自信を挫くように、例の魔女は彼の家に向かう道中で振り向いた。
「あら、さっきからつけているのはどちら様?」
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