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阿澄は右手に牙を握っていた。この牙は阿澄の気を集約して作ったモノであるが、それ故に何の能力も持たない普通の人では脳が認識できず見えない。
それが見える魔女は確かに化け物だった。専門家は異人症と呼ぶ先祖帰りの病気。よほど才があるのか、それとも援助交際に秘密があるのか。魔女は下手に目覚めると化け物になって死ぬしかない病気をコントロールしていた。むしろコントロールできるからこそ魔女なのだろうか。
「普通ならコワいお兄さん達が追いかけてくるわよ、アナタのその症状」
「お生憎様。わたしにとって男は養分よ、いろんな意味で」
「そこの彼のように金蔓にするだけじゃないみたいね」
「男の性はクスリになるの。それが蜘蛛女になったわたしのチカラ。アナタにも売ってあげましょうか? 男根(ロド)麻薬と名付けているけれど男も女もドハマリ必須よ」
「やれやれ、なんで魔女を探していたらこんなのに出くわすのかしら。一応聞いておくけれど、アナタが人魚姫の魔女かしら?」
「わたしは名も無き女郎蜘蛛……少なくとこの姿の時はね」
「やっぱり人違いか。なら遠慮はしないわ!」
脚に気をためた阿澄は素早く間合いを詰めると、息一つなく魔女の蜘蛛足を斬りつける。蜘蛛足は外骨格だからか牙では傷一つつかず、それを見て魔女はニヤリと笑う。
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