250人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
診察室を出ると、待合室の椅子に腰かけた。
水曜の午後の診察はスムーズに終わる。
市内にあるこのメンタルクリニックは完全予約制。
新患でも予約をしないと診てもらえない。
このクリニックに通い始めて12年が経とうとしている。
なんの成長もしていない荒んだ心は、白衣を着たドクターに容赦なく真っ黒な言葉を吐き出す。
私だって気付いている。このままではいけない事を……。
でも、止められない……。
口から出てくる真っ黒な言葉は私の心にぎゅうぎゅうに詰まって、喉元まで溢れそうになり、息さえできなくなる。
どこかで吐き出さなければ、
苦しくて…
苦しくて…。
そのままいっそ死ねたらいいのに……。
そう思ってしまう度、赤く染まる自分にまた嫌悪感を抱くのだ。
あの日失ったものは何だったのだろう。
今でも不思議に思っている。
あの時まで私が持っていたものは何だろう…。
探しても探しても、見つけ出す事が出来ない。
拾い集めることも、貸してもらうこともできない。
私が今欲しいものは何なんだろう……。
最初のコメントを投稿しよう!