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受け取った冊子は厚さ1cmを超えており、想像以上に文字が多かった。
厚さも文字数も文庫本と張り合えるレベルだ。
ページを開いて愕然とする。
これを読むのか……
と、げんなりする心を落ち着かせ、あったかいコーヒーを淹れてから自分のデスクに戻った。
研究員たちは皆、出払っている。
研究所というより、営業所なのではないだろうか。
翔真は室内を見渡して思った。
研究用の道具や機材は室内に存在しない。
これまで大学の研究所に当たり前にあったものが、この部屋には存在しなかった。
やはり、ここへ来たのは間違いだったのだろうか……。
そう思いながら冊子の1ページ目に目を通した。
目が離せなくなった。
そこには一人の女性の半生が記されていた。
冊子に見入っていた。
自然と涙が流れていた。
この女性が生きていてくれてよかった……。
そう思えた。
そして会ってみたいと思った。
この女性と会って、話してみたい。
生きていくための手伝いがしたい。
そう思えた。
翔真はこの案件を受ける決心を決めた。
国の未来がかかったプロジェクトという意味も、冊子の中には記載されていた。
嘘っぱちのカルテと、持出厳禁の押印がされた冊子。
この二つに描かれている人物が同一人物なら、このプロジェクトは本当に国の未来と人命を掛けた一大プロジェクトだと思えた。
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