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しかし一年もの長い入院生活の中、私もまた時と共に変わりつつあった。何も全てを悲観的に捉えなくても良いように思えてきた。この狭い鳥籠の中、私は自尊心を取り戻していた。もしかしたら治療の賜物なのかもしれない。ここにいる人たちには、申し訳ないが、この中では私は比較的マトモであると、そう錯覚した。独り言をぶつぶつ話す老婆、突然叫び出す酷く太った少女、同じことを何度も話すお隣さん。この境界線を一歩跨げば、まだまだ私も捨てたものでは無いと思うようになっていた。
けれどもはっきりしたことがある。夫である彼は彼方側の人間で、私はこの病棟の扉を隔てた此方側の人外である。共に生きるとどうしても歪みが生じてしまうのだ。
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