シンフォニック

3/12
前へ
/12ページ
次へ
◇  超未熟児で生まれた私も大人になって、何とか身長も一四〇センチを上回ったころ、このガラクタの身体は薬なしでは眠れなくなっていた。  剥き出しの電球にコバエがぱしぱしと何度も当たる。服やゴミ袋の散乱したリビングで、ガタガタ震える母親を何度も殴って、無理やり薬を奪いワンシートを全て口に含み、がりがりとそれを奥歯で噛み潰す。父親は私が生まれて直ぐに行方をくらませた。  鼻血を垂らしながら泣き喚く母親に同情などしない。ほんの数年前まで、そこで鼻血を出して泣いていたのは私の方であったのだから。  ざまあみろ。小さな身体ではあるが、年老いた母親よりは幾分か腕力もある。  こんな荒んだ生活を外に隠したまま、私は彼と付き合っていた。  私は彼に自分の異常なところを少しずつ知って欲しくてSOSを何度も出したが、彼にそういう関心は無いらしく、口では色々言うものの、何もしてはくれなかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加