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どうしようもない程人外な私は、それでもなんとか檻の中、優等生を演じ、彩り豊かな外の世界に帰還することができた。
夫である彼は、私の所為で一年間仕事をしていない。貯金を切り崩し、節約しながら生きていた。私の入院費も、子供との生活費も、なんとか集めて集めてギリギリのところで生きていた。彼は捨てることの出来ない人間なのである。捨ててしまえば楽なのに、彼はとてもいい人だ。でも、本当は捨ててしまいたい人。
だから私は一つだけ、賭けをすることにした。私は家計を助ける為、とある仕事に手を出そうとした。沢山沢山ヒントを残した。携帯電話、パソコン、態度。
私の仕事。それはとても如何わしい仕事で、男の人のそれを満たす仕事だった。気鬱のようなものを患う私にとっては、唯一務まる仕事であり、夫である彼への酷い裏切り行為でもあった。
実行に移す前に沢山沢山残したヒント。もしも彼がそれに気付かず、私を叱らないのならば、私は彼を自由にしよう。この檻付きの人生から解き放ってあげよう。そう心に誓っていた。
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