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一時限目の休み時間、二時限目の休み時間とタイミングを狙ったが、結局声を掛けられずに無情にも放課後を迎えてしまった。
いつも動作がとろい桜木が、今日に限ってさっさと帰り支度を整えて教室から出て行ったし、絶対怒ってるよあれは……。
もう巻き返しは無理だろうか。嫌がる桜木に付き纏うより、今からでも別の子を探した方が良いのかもしれない。でも、こんなに未練タラタラの状態で、新しい候補なんて見付けられるのだろうか?
「叶~、みんなでカラオケ行くんだけどお前も行く?」
「……あー、いや、今日は帰る……」
「お、さてはシンデレラとデートか?」
「うっさいバーカ……」
本日何十回目になるか分からない溜め息を吐いた俺は、帰り仕度を整えて一人寂しく下駄箱へと向かった。
「叶君、じゃあねー!」
「んー、また明日」
生徒用玄関から出て行く同級生達は、俺と違って皆楽しそうだ。放課後がこんなに憂鬱だと感じた事が、今まであっただろうか。
項垂れながら自分の下駄箱の扉を開けると、スニーカーの下に紙切れが挟まっているのが目に付いた。
(なんだこれ?)
登校した時はこんなもの、靴底にくっ付いていただろうか。
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