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 先生に着席を促された桜木は、俯き加減のまま、のたりのたりとこちらに歩いて来る。何というか、巨人とゾンビを足して二で割ったような不気味さだ。 「あの……俺、叶……よろしく」 「……よろしくお願いします」  桜木が席に座る前に一応挨拶をしたが、返って来た声は蚊の鳴くようなか細さだった。いや、蚊の方がまだ元気に鳴くかもしれない。 (うわ……うわぁ……!)  教室中が気まずさと落胆の空気に包まれる中、俺は一人、今にも叫び出してしまいたいくらいに高揚していた。  授業中にその陰鬱そうな背中を覗き見ては、ドキドキと胸が高鳴った。  恋愛のときめきとは全然違う鼓動の強まり。この、期待と不安を混ぜ合わせたような感覚には覚えがある。  その暗く濁った瞳を磨き上げて、誰もが羨望するブラックダイヤモンドに変えてやりたい!  授業の終了を知らせるチャイムが鳴るや否や、俺は桜木の机の前に立ち身を乗り出した。 「桜木!俺のシンデレラになってくれ!」  ……それからしばらく、俺が転入生にプロポーズをしたという噂が学校中に広がったのは言うまでもない……。 ◆◆◆◆◆ 「……って言うのがこの学校の文化祭であって、それがシンデレラコンテストって言うんだよ。分かったか?」 「……はい」  転校初日の転入生は忙しいらしい。     
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