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一人の人間の人生を変えるあの喜びを、俺はまた感じたい。
「いやぁ、でも、田中さんはホントお前お手柄だと思うよ」
「そうだろ!?」
「お、噂をすれば」
廊下側を指差す友人につられてそちらに視線を向ければ、一人の女子生徒が美しい黒髪を揺らしながら歩いていく。薄いウエストに反して胸ははち切れんばかりに豊満で、笑った時に覗く八重歯が可愛らしい。
男子生徒達は、全然気にしてないですよという素振りを見せながらも、彼女をちらちらと目で追っている。俺の近くにいた女子生徒達は、やっぱり田中さん可愛いよねとはしゃいでいた。
俺と話していた友人も、他の男子生徒と同様に彼女の事を目で追い、はぁと溜め息を吐く。
「田中さん美人なのに明るいし気取らなくて良いよなぁ……。ちょっと空気読めてない所もあるけど、そういう所も天然ぽくて可愛いって言うか」
「……お前、コンテストの前は田中さんの事邪険にしてただろ」
「それはそれ、これはこれ。何だよ、田中さんに振られて拗ねてんのかよ」
「拗ねてねーし! つか俺、田中さんに対してそんなんじゃないから!」
動揺を誤魔化すように、自然と声が大きくなる。
恋愛ドラマのような展開を、期待していなかったと言えば、まぁ、嘘になる……。
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