1

9/37
前へ
/37ページ
次へ
(そう言えば俺の前の席、誰も居ないけど)  間も無く本鈴が鳴ると言うのに、俺の前の席は空席のままだ。まさか、進級初日から欠席?それとも遅刻か?  見知らぬ同級生の心配をしている間に、教壇へと登った担任がありきたりな挨拶を始めた。 「えー、それから、知ってる人もいるかと思いますが、このクラスには転入生を迎え入れます」  転入生、という言葉に、教室内が色めき立つ。  そう言えば、転入生が来るって噂があったな。じゃあ俺の前の席は転入生の為に空けてあるのか。  教室の右半分が女子、左半分が男子と分かれているこの教室で、俺の前が空いているという事は、転入生は男子という事で間違いないだろう。可愛い女の子だったらどうしよう!なんて期待を抱く暇すら無かった。  他の生徒達も、空いている席の位置に気付いたのか、男子達はあからさまに口数が減り、逆に女子達はそわそわと落ち着きがない。  転入生が女子じゃないのは残念だが、自分の前に転入生が座るとなると相手が男だろうが女だろうが緊張する。  まず自己紹介をして、それから、何を話したら良いだろう。  そんな事を考えている間に、担任が廊下に向かって入室を促した。  教室の扉がゆっくりと開いて、全員の視線がそちらに注がれる。     
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加