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「……俺、怒ってるんだけど。何でそんな嬉しそうなの」
「桜木の色んな顔見たいから、そういう顔見れると嬉しい!」
「……もういいや」
呆れたと言いつつも、桜木はどこか照れているようにも見えた。
その後も桜木の肉体改造は順調に進み、ぎこちないながらもクラスメイト達と会話が出来るようになった。
外見の変化は上々だが、それに対して中身が追い付けていないのは明らかだ。外見が良ければ人は寄って来るが、それだけでは一過性に過ぎない。
他人から長く深く好かれる為には、やはりそれなりの社交性が求められる。だが姿勢や歩き方と違って人の性格は簡単に変えられるものでは無いのが難点だ。本人が積極的に変化を望んでいないなら、尚更。
「桜木って、あんまり顔に出ないタイプだよな」
「そうかもね」
「もっとニコニコしてたら良いのに」
「楽しくもないのに笑えない」
落ち着いたクラシックの流れる喫茶店内で、俺は頭を悩ませていた。
桜木は完全に、多勢に好かれる為に媚びたりするという事が出来ないタイプだ。八方美人とは真逆。
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