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人と話してる時にもっとにこやかでいられたら、いや、たまにでも良いから笑顔を見せてくれたら、間違い無く更に評判を上げる事が出来る。だからと言って、強制出来るものでは無いからもどかしい……。
「桜木って笑った事ある?」
「あるよ」
「どんな時?」
「楽しい時」
「お笑い番組観てる時とか?」
「叶といる時は楽しいよ」
「え~、適当に言ってるだろ~……。桜木の笑った顔なんて見た事ないんですけど~」
桜木と今一番仲が良いのは俺だという自負はあるし、俺と一緒にいる事は桜木にとって嫌な時間では無いという事も見ていれば分かる。しかし、俺と居て楽しそうに見えるかと問われれば、自信を持って頷く事は出来ない。
俺は手に持っていた野菜ジュースを飲み干すと、席を立つ。
それに続いて桜木も、空になったグラスを机に置いた。
ありがとうございましたと言う丁寧な挨拶に見送られ、俺達は喫茶店を後にした。
「逆に聞くけど、叶はどんな時が楽しい?」
「うーん、ゲームしてる時とか?」
「ゲームしてる時ってニコニコしてる?」
「……別にしてない」
「そうでしょ。別にニコニコしてる時だけが楽しい訳じゃないよ。叶と一緒にいる時が楽しいって言うのも、そういう事」
何だか、いい感じに締めくくられてしまった。
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