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 しばらく気まずい沈黙が流れた後、ふ、と小さく息を吐き出す音が背後から聞こえた。 「ふふ、猫ちゃん」  俺は勢い良く振り返ると、桜木の胸元に掴み掛かる。 「お、置き物って知ってたなら先に言えよ!!」 「だってまさか、気付いてないなんて、はは、他に猫がいてそれに呼び掛けてるのかと思ってたから……あははっ」 「笑うなぁ!!!」 「ふふふ、俺の笑った顔、見たかったんでしょ」 「そうだけどっ、今は違う! 今はそういう時じゃない!!」  その俺の痴態が、桜木の中の何かをぶっ壊したらしく、それ以来、桜木が笑っている場面を目撃する事が増えた。  それは俺と二人きりの時であったり、クラスメイト達と話している時だったり、シチュエーションは様々だ。  笑顔と言っていいのか疑問が残る程のささやかな笑みである事が多かったが、その笑い方が上品だと、女子達の間ではなかなか好評のようだ。  嬉しい事ではあるのだが、きっかけを考えるとどうしても手放しには喜べない。 「ふふ、叶、あそこに猫ちゃんがいるよ」 「……っ、もう、良いってその話!」 「俺これからしばらく、猫を見る度に叶の事思い出すと思う」  俺もしばらくは猫を見る度にあの痴態を思い出すだろうさ。     
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