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「おーぎ君カッコよくなったよね、私達の学年だけじゃなく、先輩達も言ってたよ!」
「……どうも」
コンテストに参加を決める前のあの一件のせいか、桜木は田中さんの事が少し苦手なようだ。
眉根を寄せると、不安そうに俺の隣にぴたりとくっつく。
「でも、何か後一押し足りないんだよ」
「一押し?インパクトが足りないって事?」
「うーん……、そんな感じかなぁ」
「ステージで脱いじゃえば良いんじゃない?」
「いや、それは」
突拍子も無い提案に俺はアハハと笑っていたが、当の桜木は怯えたように俺を見つめていた。
そんな事させないよね? という必死な声が聞こえて来そうだ。
田中さんは、気まずそうな桜木にはお構い無しで、桜木の顔をじっと観察する。蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった桜木を見て、流石に気の毒になった。
この場から解放してやるかと思い、立ち上がろうとした瞬間、田中さんが、あっ、と声を上げた。
「色気! 色気が足りないんじゃない!?」
「色気……?」
言われて、ハッと桜木の顔を見る。
確かに、桜木は大分イケメンというカテゴリーに近付いてはいるが、上品過ぎると言うか、面白味が無いと言うか、良くも悪くも普通のイケメンもどきの高校生なのだ。
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