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 桜木はジャケットを脱ぎ捨てると、急いたような手付きで自分のシャツのボタンを外し始める。  その指先が次に俺のシャツを掴んだ瞬間、同性愛に詳しくない俺でも、今の状況が危機的であると理解するのは簡単だった。  俺の上に跨る桜木から逃れようと、必死にもがいてみるが、桜木は何食わぬ顔のまま。  ひとつ、またひとつと、シャツのボタンを外され、胸元が露わになっていく。  完全に脱がされたシャツは、不要物のように投げ捨てられ、肌の上を滑る桜木の指が俺の胸をやんわりと抓った。 「お、桜木、桜木っ……!」 「叶の胸、やっぱりすべすべしてるね……」  ここは気持ちいい? ここはどう? と、確かめるように色々な所を撫でられる。  首筋、二の腕、胸、背中、腹。まるで実験されているみたいだ。  上半身を探り尽くした桜木の興味は、グレーのスラックスに隠れた俺の下半身へと向かった。  視線が俺の腹部に移った事に気付き、手を伸ばし必死にその部分を匿う。 「いっ、嫌だっ、駄目だって……!」 「なんで? お風呂で見た事あるから今更隠す意味ないよ」 「本当、無理っ! 無理だから!」  暴れた際に振り上げた膝が桜木の脇腹を強打してしまい、桜木は眉間に皺を寄せて呻き声を上げる。そのまま、お腹を押さえて床に蹲ってしまった。     
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