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紺色に侵食され始めたオレンジの夕焼けをぼんやりと眺めながら、流れて行く時間をただただ虚無に過ごす。
つい先程まではこの教室にもクラスメイトが何人か居て馬鹿騒ぎしていたけれど、いつの間にか帰ってしまった。この三階にはもうほとんど人が残っていないようで、どこかの誰かの話し声よりも、風に揺れている木々の音の方が鮮明に聞こえる。
帰宅する気力すら失い、このままここで夜を明かしてしまおうかと馬鹿な考えが頭を過ぎった時、教室の戸が開く音がしてそちらを振り返った。
「ここに居たんだ。ずっと探してたのに、灯台下暗しってやつ?」
学校の制服姿の桜木が、そう言いながら静かに俺の隣に並ぶ。
「叶、何見てるの?」
「……空気」
「変なの」
桜木の顔が見れなくて、何の変化もない街並みを目が痛くなるまで必死に見つめ続ける。
そんな面白味もない視界に突然、安っぽい銀色の銅像が姿を現した。
「これ、金色じゃなくてごめんね」
「なんで桜木が謝んの……」
去年も思ったけど、このトロフィーのデザイン、デパートにあるマネキンみたいだよな……。
戸惑いながらも、桜木からそれを受け取る。
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