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「田中さんや桜木とはまた違うタイプだし、楽しみだ」  ふふふと口元を綻ばせながらオレンジジュースを口に運ぶと、向かいに座っていた桜木が何も言わずに席を立った。  トイレかな? と思ったが、桜木はおもむろに俺の隣へと場所を移し、ぴたりと距離を詰める。  ジュースを飲んでいる所を至近距離からじっと見つめられ、耐えきれずにグラスを置く。  何、と尋ねれば、桜木がひそりと俺の耳元で囁いた。 「キスしていい?」 「……は!? 今!?」 「今」  俺はきょろきょろと、執拗なまでに辺りの様子を窺う。  俺達がいる席は店の一番奥で、隣の席とは高いパーテーションで仕切られている。  唯一警戒するとすれば、俺達の席の横にある狭い通路が客用トイレへと繋がっている事くらいだが、店内にいる他の客は二人だけで、今はここから離れたカウンター席で店員との会話を楽しんでいる。このタイミングでどちらかがトイレに向かう確率はどれくらいだろうか。  そんな事を考えている間に、桜木は俺の懐へと滑り込み、チュッと唇を重ねた。  心の準備が整う前に攻め込まれ、心臓が縮み上がった。  俺は出来る限りの小声で、桜木に対して抗議の意思を示す。 「あ、あのなぁっ、場所を考えないと……っ」     
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