12人が本棚に入れています
本棚に追加
さっき教室を出る時にクラスメイトと話をしていたから、今もいるはずだ。
そう言えば、ここのところ上田と出掛ける事が多かったから、桜木と二人で帰るのは久しぶりだな。
最後に二人きりで帰ったのはいつだったっけ? と指を折って数えるが、十本の指ではおさまらない事に気付いて冷や汗が流れた。
体感では、四日五日くらいだと思っていたのだが……。
俺は急いで階段を駆け下りると、自分の教室へと戻った。
桜木は相変わらず、女の子達に囲まれて会話を楽しんでいる。
賑やかな雰囲気の中に割って入るのは気が引けるが、女のお喋りが終わるのを待っていたら昼休みが終わってしまう。
「なぁ、桜……」
「おい桜木!!」
俺の言葉は、苛立ったように荒げられた声に掻き消されてしまった。
俺のいる扉とは反対の扉から、その声の主である男子生徒が教室に飛び込んで来た。
眉間に深く刻まれた皺と、キツく握り締められた拳から 、彼の内で燃える怒りの炎が垣間見えた。
その男子生徒は真っ直ぐに桜木の所まで歩み寄ると、自分より少し高い所にある桜木の顔をキッと睨み付ける。
桜木にまとわりついていた女子生徒達が、気まずそうに後ずさった。
「桜木、お前、俺の彼女に手ぇ出しただろ!」
「はぁ?」
最初のコメントを投稿しよう!