第1章

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 ※ 「改革? 改革ってなんです」  思わず瑛司は声を上げてしまった。それは警備部長以下、警備部の管理職と課員が顔をそろえた会議室で、新課長になった柿生の口から出た言葉だった。警備部の改革。初耳だった。 「襲撃者の制圧に対し、ここにいる瀬名亮一郎くんが貢献したことは、皆知ってのとおりだ。瀬名くんは三年に渡るアメリカ合衆国警察での研修を終え、昨夜帰国したばかりだが、それに当たって異例の時期ではあるが、人事を行った。以前より申し出のあった八島くんの辞意を受けることとし、後任に柿生警部を命じる。また第五係長には瀬名警部を任じる」 ――という馬淵警備部長の言葉だけでも充分に驚かされた。が、改革という言葉に、瑛司は躊躇なく犯人を打った亮一郎の判断を思い浮かべた。そして、その予想は当たっていた。  がたり、と小さく音がして、亮一郎が立ち上がった。亮一郎はここでも気を付けの見本のようにすっと筋が一本通った姿勢だ。 「この国での銃火器を使用した犯罪件数は近年増加の一途を辿っています。特に顕著なのが要人の襲撃事件です。今回の犯人がそうだったように、国内外のテロリスト集団、またはプロの傭兵、元兵士などによる暗殺未遂事件は枚挙に暇がない。第五係は要人襲撃事件の増加を受け設立された比較的新しい部隊ですが、警護課の遊軍として特別に危険度の高い、重要な任務を任されます。危機に瀕した際の保護対象者の速やかな退避、それがSPの任務です。……が」  亮一郎はそこで一度言葉を切り、係員たちの顔に順に目を据えていき、最後に瑛司を見た。おかげで、続く言葉は瑛司にのみ告げているかのようだった。
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